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連載第16報:悩める患者の社会的通院

2025.11.25|多受診頻回受診社会的通院

 厚労省の「患者調査」(註1)によると,わが国の令和5年度推計患者数は外来で7275.0千人となっています。人口の約16.5人に1人が外来患者となっています。外来患者は40歳以上の壮年層・高齢層の生活習慣病・老人病の患者が多くを占めていますので,今後も患者数の増加とそれに伴う医療費の増加,医療費格差の拡大が予想されます。

「コラム;連載第15報 知って欲しい医療費格差とその特徴(入院外編)」で市町の医療費格差の要因として「多受診」「頻回受診」が予想されました。

 そこで,今回のコラムでは,多受診,頻回受診の解説とその中に含まれる社会的通院についてご紹介いたします。

多受診,重複受診,頻回受診の違い

 高齢になると複数の疾患に罹患することが知られています。そのため,例えば,一人の患者が白内障で眼科受診,腰痛で整形外科受診,循環器系疾患や糖尿病で内科受診などの「多受診」がみられます。レセプト(註2)によると,多受診,頻回受診は以下に分類されます。

①1か月に複数の医療機関を受診する多受診
(注;多受診の一種として同一傷病で1か月に複数の医療機関を受診する重複受診がある)
②1か所の医療機関に頻回に受診する頻回受診

患者の社会的通院の主な理由

「社会的通院」に関して明確な定義はありませんので,本コラムでは「病状は安定しているものの,患者自身の様々な理由から通院する多受診(重複受診),頻回受診などの受診行動を社会的通院」と呼ぶことにします。

 ただし,多受診,頻回受診のすべてが社会的通院ではありません。以下に多受診,頻回受診の主な理由をご紹介します。

1か月に複数の医療機関を受診する多受診の理由
「複数疾患の罹患」
「CTやMRI検査のための病院と診療所の連携」
「がんなどの診断に対するセカンド・オピニオン」など
社会的通院理由
「医師のインフォームド・コンセントの不足感」
「医療機関への不信感・不親切感」
「治癒しない疾患に対する健康不安」など
1か所の医療機関に頻回に受診する理由
「リハビリ治療」
「透析治療」など
社会的通院理由
「同じ疾患をもつ同病者同士の情報交換」
「治癒しない疾患に対する健康不安」など

悩める患者が求めるピアサポートの場

 以前から,多受診は「はしご受診」,頻回受診は「病院のサロン化」などと言われており,社会的通院の解消が医療費適正化対策の課題となっています。特に,重複受診は同じ薬効のお薬を重複服薬して健康被害を生じる可能性があります。当然のことながら,一人当たり医療費も高くなるからです。(註3)

 そのため,著者らは過去に何度も多受診(重複受診),頻回受診分析をした経験がありますが,多受診は最大11か所の医療機関/月,頻回受診は31日/月の受診があったことに驚いた記憶があります。

 医療保険制度の充実によって,比較的低い自己負担額で受診できること,医療機関への通院アクセスの良さなどが多受診,頻回受診を可能としていますが,「真に医療が必要か?」「社会的理由なのか?」については判断が困難なのが実情です。

 いずれにせよ,多受診,頻回受診には「慢性疾患で治癒しない疾患に悩む患者の姿」が見え隠れします。医療機関は,単に疾病治療だけでなく,患者の気持ちに寄り添った「こころのケア」の提供も必要であることを示唆しています。

 慢性疾患で悩む社会的通院患者が求めているのは,「がん同病者とその家族の情報交換・ピアサポートなどの場であるがんサロン」(註4)のように「糖尿病等の生活習慣病のピアサポートの場」かもしれません。

さいごに

 日本は,医療保険制度が充実していますし,医療供給体制も整備されています。しかし,生活習慣病,老人病などで40歳以上患者の指数関数的増加によって医療保険財源は枯渇しつつあります。(註5)

 また,本年2025年に団塊の世代が75歳以上後期高齢者になるため,患者数の増加は一層進むことが予想されています。

 患者の外来受診行動は,デパート感覚で大病院志向があることが知られていますが,体調に不安を感じたら,まずは地域の診療所(かかりつけ医)を受診してくださることをお勧めします。普段から身近で診療をしてくれているプライマリーケア医(かかりつけ医)にご相談ください。

 特にかかりつけ医がいない方は,湖南メディカルコンソーシアムが運営する「医療と介護の相談窓口」にご相談(無料)にいらしてください。

註1;  国民衛生の動向2024/2025,厚生労働統計協会
註2; 診療報酬明細書(レセプト)は,一人の患者が1か所の医療機関で受診した1か月分の費用を医療機関が保険者に請求する明細書のこと。
註3; コラム;連載第15報 知って欲しい医療費格差とその特徴(入院外編); 参照
註4;がんサロンとは,がん患者とその家族が同病者同士として治療・副作用・経済的負担などの情報交換や同じ境遇の仲間同士として支え合う(ピアサポート)などの場のこと。
註5; コラム;連載第10報 医療費財源の危機; 参照
注;イラストは,Illust ACのフリーイラスト(うにここ作)から引用

湖南メディカルコンソーシアム 安西将也

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