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連載第13報:介護保険制度創設の理由となった「社会的入院」

2025.09.05|介護保険平均在院日数社会的入院

 前回のコラム「コラム;連載12報」では,レセプト医療費の三要素を用いて,市町の入院診療費の格差とその特徴をご説明いたしました。

 その中で「社会的入院」が入院診療費の高騰に影響していることが予想されましたので,今回のコラムでは,「社会的入院」についてご紹介いたします。

加齢とともに急激に増加する入院患者

 図に,入院の年齢階級別受療率(人口10万対患者数)を示します。(註1)

 受療率は, 0歳から5歳まで少し減少しますが,40歳くらいまで加齢とともにゆるやかに直線的に増加しています。ところが,40歳以上になると指数関数的に急激に増加しています。

 この入院患者の急激な指数関数的な増加要因の一つは,循環器系疾患,悪性新生物などの生活習慣病の増加です。生活習慣病の増加は,ライフステージが大きく影響しています。 

 これが「特定健診・特定保健指導」や「介護保険制度の第2号被保険者」が40歳以上を対象にしている根拠の一つです。(コラム連載第3報;参照)

 また,入院患者の急激な増加は,年齢や生活習慣病以外にも「患者の社会的な要因」も影響しています。

加齢とともに平均在院日数は増加する

 図をみると,加齢とともに退院患者の平均在院日数は増加しています。65歳以上になると急に増加しますので,これら患者の中に「社会的入院」患者が多く含まれていることが容易に予想されます。そもそも日本の平均在院日数は世界の中でも圧倒的に長いことが知られています。

 厚労省によると,社会的入院は『病状はある程度安定しているにもかかわらず,居住の場やその他の生活支援を受けられないために長期入院している状態』と定義しています。

 その背景には,「患者に退院意思がない」「家族の受け入れ拒否」「独居のため在宅での療養が困難」や「特別養護老人ホームや老人保健施設等の福祉施設数・ベッド数の整備不足」などがありました。

 また,一部の豪雪・極寒地域では,寒さを避けるために,冬季に高齢者の入院患者が増加する「越冬入院」も社会的入院の一種と考えています。

 いずれにせよ,人口の多い高齢者の社会的入院は,医療費の増加に大きく影響しています。

 そのため西暦2000(平成12)年に介護保険制度が創設されました。
その目的は,「①家族介護から高齢者介護を社会全体で支える介護の社会化」「②医療費増高を抑えるために,介護(費用)を医療(費用)から切り離し,社会的入院解消のための条件整備」にありました。

 更に,病院で療養病床→介護療養病床→介護医療院へと政策転換を推進したものの,未だ社会的入院の抑制効果は十分でないのが実情のようです。

さいごに

 日本は,医療保険制度が充実していますし,医療供給体制も整備されています。しかし,患者の指数関数的増加によって医療保険財源は枯渇しつつあります。

 また,本年2025年に団塊の世代が75歳以上後期高齢者になるため,入院患者数の増加と医療費の増加は一層進むことが予想されています。今後,医療保険料の増額や医療費の自己負担割合の引き上げも予想されます。そのため社会的入院を改善することは重要な課題です。

 社会的入院解消のためには,医療と介護の連携によって,医療施設サービスから福祉サービスへの移行が可能となるように,高齢患者の地域での生活環境整備の支援が望まれます。

 社会的入院を解消して,医療費適正化(註2)を実現するために何よりも効果があるのは,ご家族とともに高齢者ご自身が,質の高い日常生活を営んで,疾病予防,重症化予防そして介護予防に心がけて,健康寿命の延伸を目指すことです。

 健康寿命延伸に繋がる生活一般に関してご質問・ご相談があれば,湖南メディカルコンソーシアムが運営する「医療と介護の相談窓口」にお越しください。専門家がお待ちしています。

註1; 国民衛生の動向2025/2026,厚生労働統計協会
註2; 真に医療を必要とする患者に対する医療費サービスは提供するべきですから,目指すのは「医療費適正化」であって「医療費抑制」ではありません。
出典; イラストは,illust ACのフリーイラスト(カタテマデザイン室,作)から引用

コーヒーブレイク

第一次産業革命の時期にトーマス・ロバート・マルサス(英国; 1766-1834年)が,著書[人口論]の中で『人口は指数関数的に増加するが,食料は算術級数(直線)的にしか増加しない。いずれ食料不足で人々は飢えと貧困を招くから,人口増加抑制対策として婚姻時期を遅らせること』を提唱しました。現在の日本の人口が減少している要因の一つとして,「女性の社会進出」「晩婚化」「晩産化」が言われています。マルサスが,200年前に人口問題と婚姻との関連に着目したことが印象的です。

湖南メディカルコンソーシアム 安西将也

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