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連載第11報:レセプト医療費の三要素

2025.07.28|医療費財源レセプト医療費の三要素

 前回のコラム「連載第10報」では「医療費財源の危機」を解説いたしましたが,医療費財源の危機を理解するためには「レセプト医療費の性質」を知ることが重要です。

 そこで,今回は,レセプト医療費の性質が分かる医療費の三要素をご紹介いたします。

レセプト医療費の仕組み

 レセプト医療費は,保険医療機関が一人の患者に一か月間提供した医療サービス費用の保険給付実額のことです。保健医療機関は,その患者が加入している医療保険者に「診療報酬明細書(通称レセプト)」を用いて請求しています。

 このレセプトには診療行為別の日数(頻度)と点数(原則1点は10円として換算; 以下,医療費)が記載されていますので,レセプトから読み取れる医療費関連指標は,以下の5つの指標があります。

一人当たり医療費(=総医療費/被保険者数)は,被保険者一人が,一か月間受診した平均医療費を示します。

受診率(=レセプト件数×100/被保険者数)は,被保険者一人が,一か月間で受診した平均医療機関数を示します。

一件当たり医療費(=総医療費/レセプト件数)は,レセプト一件当たりの平均医療費(単価)を示します。

一件当たり日数(=総日数/レセプト件数)は一か所の保険医療機関に一か月間受診した平均日数を示します。

一日当たり医療費(=総医療費/日数)は,一か所の保険医療機関に一か月間受診した一日平均医療費(単価)を示します。

医療費の構造

 レセプトによる医療費は,前述の5つの指標で以下の構造になっています。赤色の三つの指標で一人当たり医療費が計算できますから,これらを「医療費の三要素」と呼んでいます。

レセプト医療費の三要素

 図をみると,外来()では後期高齢者は若人よりも受診率2.3倍,一日当たり医療費1.2倍,一件当たり日数も1.2倍となっています。三要素ともに若人より高くなっています。

 したがって,後期高齢者の一人当たり医療費が若人よりも高くなるのは当然です。(厚労省では後期高齢者以外を若人と呼んでいます。)

 一方,入院()では後期高齢者は,若人よりも受診率6.2倍,一件当たり日数1.4倍となっていますから,後期高齢者は,若人よりも入院することが多く,入院すると長期化することを示しています。

 しかし,一日当たり医療費をみると,後期高齢者は若人の0.8倍ですから,重症度は若人よりも低い者が多いことを示しています。

 この例のように,レセプト医療費の三要素を用いて,後期高齢者と若人の医療費を比較すると「医療費格差とその特徴」がわかります。

さいごに

 医療保険財政の安定的運営と医療費格差の縮小対策のためには,レセプト医療費の性質を知ることが重要です。そのため各医療保険者や後期高齢者医療広域連合(註1)は「レセプト医療費の三要素の年次推移」,「性・年齢や疾病と三要素との関係」などに注視しています。

 また,地域医療の担い手である各医療機関の管理者には,「診療圏(註2)での三要素の状況」などから,効果的・効率的な医療サービスの提供に期待したいと思います。

 一方,患者側としては医療費の高騰が続けば,当然のことながら医療保険料や患者の自己負担料が高くなりますから,質の高い日常生活を営むように心がけて頂きたいと思います。

 具体的に高額療養費,疾病医療費,医療保険料などでご相談があれば,湖南メディカル・コンソーシアムが運営している「「医療と介護の相談窓口」においでください。専門の相談員がお待ちしています。

註1;  平成20年に新設された後期高齢者医療制度の運営を担うために,都道府県ごとの区域内すべての市町村が加入して設立された特別地方公共団体。原則75歳以上後期高齢者の医療給付を担っている。
註2; 各医療機関に入院や通院している患者の地理的な範囲

参考資料; 国民衛生の動向2020/2021,厚生労働統計協会

湖南メディカルコンソーシアム 安西将也

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