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知っておきたい最近の食物アレルギー事情

2025.07.18|食物アレルギー食べ物免疫

 「食物アレルギー」という言葉は知っていても、「なんだかよくわからない」ということが多いのではないでしょうか。小さいお子様とかかわる機会のあるすべての方に知っていただきたい、最近の食物アレルギー事情を簡単に紹介します。

食物アレルギーとは?

 ヒトには、自分以外のもの(異物)を排除する働きが備わっており、これを「免疫」といいます。食べ物も本来は異物なのですが、生きていくために必要なものであるため、口から食べたものは異物として認識せずに消化吸収できる絶妙なシステムが整っています。これを「経口免疫寛容」といいます。しかし、何らかの原因で食べ物を異物として過剰に認識し、アレルギー症状を引き起こしてしまうことがあります。これが食物アレルギーです。食物アレルギーになるメカニズムはまだよくわかっていないことも多いのですが、「経皮感作」といって、湿疹などがありバリア機能が低下した皮膚から食品が入ることによってアレルギーを引き起こす抗体(IgE)がつくられ、その食品を食べた時にアレルギー症状を引き起こしてしまうと考えられています。このように、「経皮的に食物アレルゲンに曝露されると感作が成立し、適切な量とタイミングで経口摂取された食物は、むしろ免疫寛容を誘導する」という「二重抗原曝露仮説」が最近の考え方です。

 過去には、食物アレルギーの発症予防のために離乳食の開始を遅らせることが望ましいとされた時期もありましたが、現在では適切な時期に食べる方がよいと考えられています。ただし、乳児湿疹などで赤ちゃんの肌のバリア機能が弱っている場合は、医療機関を受診して皮膚症状の改善を行い、離乳食についても相談することが推奨されています。また、すでに食物アレルギーを発症している場合は、食べることによって症状が誘発されるため、むやみに食べても治りません。アレルギー専門医のもとでの治療が大切です。

食物アレルギーとは?

 数年前まで、日本の食物アレルギーの原因食品は①卵、②牛乳、③小麦でしたが、近年急激に木の実類(特にくるみ)が原因の食物アレルギーが増えており、令和6年度の「即時型食物アレルギーによる健康被害の全国実態調査(消費者庁)」によると①鶏卵、②くるみ、③牛乳、④小麦となっています。木の実類は、そのまま食べる以外にも、中華料理やドレッシング、お菓子など、目に見えない形で意外な食品の材料として使われていることがあるため注意が必要です。

 その他、落花生やいくら、果物など、様々な食品がアレルギーの原因になることがあり、どの食品がアレルギーを引き起こすかは、人によってさまざまです。

お子さんに食べ物をあげたいときには?

「これ、おいしいから食べさせてあげたいな」と、お孫さんや近所の子どもたちなど、かわいいお子さんに、お菓子やジュースなどの食べ物をあげる機会があるのではないでしょうか。たとえ、子ども本人に確認して「食物アレルギーはない」と言ったとしても、その食べ物に初めて食べる食材が入っていて、予期せぬ食物アレルギーを発症してしまう可能性もあります。離乳食が始まったばかりの赤ちゃんはもちろんのこと、小学生くらいまでは、保護者の方に確認したうえで、おいしいものを食べさせてあげてください。

参照:アレルギーポータル https://allergyportal.jp/
令和6年度 即時型食物アレルギーによる健康被害の全国実態調査

龍谷大学 農学部 食品栄養学科 准教授 岡崎史子

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