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連載第9報:特定健診未受診の様々な理由(後編)

2025.06.24|特定健診医療保険者健診未受診理由

 読者の皆様の健康寿命の延伸のために,特定健診を毎年受診して,自らの健康状態,生活習慣上の課題に気づき,健康的な生活習慣へと行動変容できるように生活習慣を改善して頂きたいです。

 特定健診は,医療保険者が実施主体として被保険者・被扶養者の①健康づくり,②健康格差を解消する非常に重要な意義ある健診ですが,その意義が十分に浸透していないことがうかがえます。

 前回の「コラム連載第8報(前編)参照」で述べましたが,医療保険者間に「健康格差」が生じる理由として,特定健診・保健指導の「受診率格差」が一因となっています。

 そのため,各医療保険者ともに健診受診率向上のための特定健診未受診対策が最重要課題となっています。

 そこで,今回は,特定健診の未受診理由をご紹介します。

特定健診の未受診理由

 著者らの調査を参考にして「未受診理由」をご紹介します。この機会に読者の皆様の中で,健診を受診していない方がいらっしゃったら,健診受診に向けて前向きにお考えいただきたいと思います。健診受診は,健康への入り口です。

1.健診意義の理解不足
「①必要な時はいつでも病院や診療所を受診できるから」「③通院していたから」「⑪健康に自信があり,必要性を感じないないから」「⑧毎年,受ける必要性を感じないから」などの回答は,健診の意義を十分に理解していないと思われます。

2.健康意識の低さ・危機感不足

「②時間がとれなかったから」「④面倒だから」「⑥忘れていたから」「⑬場所が遠いから」「⑭移動手段がないから」などの回答は,健康意識の低さ,危機感のなさが感じられます。

3.医療保険者の周知不足や情報獲得不足

「⑤費用がかかり経済的に負担だから」「⑨知らなかったから」などの回答は,医療保険者の周知不足や健診情報の把握不足が感じられます。

4.健康不安・健診不信感

「⑦健診項目に魅力がないから」「⑩結果が不安なため,受けたくないから」「⑫検査等に不安があるから」などの回答は,健康不調から感じる不安や健診への不信感があると思われます。

 このように,様々な健診未受診理由があるようですが,「①必要な時はいつでも病院や診療所を受診できるから」「⑪健康に自信があり,必要性を感じないから」などの回答からは,疾病予防の意識が全く感じられません。根底にあるのは「健康意識の低さ」と「無関心」のようです。また,健診実施主体側の周知方法の工夫・改善の必要性も示唆しています。

 予防医学では,1980年代に提唱された「無関心期」「関心期」「準備期」「実行期」「維持期」の5段階の行動変容ステージに応じたアプローチが考えられています。

 この中で最も難しいのは「無関心期」から「関心期」に移行することです。健診対象者本人の自覚が不可欠です。そのためには,社会の後押し,家族の後押し,専門家の後押しが必要です。

さいごに

 個人の価値観・健康観は多様化していますから,健診未受診の理由も様々なようです。

 最近では,「地域の商店街で使える健康マイレージ・ポイントやクーポン券の配布」「行動経済学の『ナッジ理論』註1を用いて,未受診者の心理面から受診勧奨」をしている医療保険者もあるようです。

 また,企業の「健康経営」の面からも,職員・家族の健診受診率向上は重要な目標となっています。積極的に健診を受診して生活習慣病の一次予防に努めて頂きたいと思います。

 なお,特定健診や人間ドック等でご質問があれば,湖南メディカル・コンソーシアムが運営している「医療と介護の相談窓口」においでください。専門のスタッフがお待ちしています。

註1; ナッジ理論は米国の経済学者のリチャード・セイラー教授らが2008年に「人間の心理的傾向や行動心理を利用して,強制することなく行動変容を促す理論です。ナッジ(nudge)とは,「軽くつつく,そっと後押しする」という意味です。 参考文献; 「国民衛生の動向2024/2025」,厚生労働統計協会

湖南メディカル・コンソーシアム 安西将也

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