COLUMN
お役立ちコラム
2026.03.12|給食医療・福祉施設栄養
病院などの医療施設や、老健・特養といった高齢者福祉施設で、入院患者や利用者に提供される給食は、「まずい」と言われることがあります。なぜ、給食はそのように言われてしまうのでしょうか。
医療・福祉施設での食事提供は、栄養部門に所属する管理栄養士をはじめとするスタッフが、適切な栄養管理を行いながら、安全で衛生的であることを前提に、美味しい食事を提供できるよう日々工夫を重ねています。それにもかかわらず「まずい」と言われてしまう背景には、給食ならではの課題があります。
その一つが、調理してから提供するまでに時間がかかるという点です。多くの患者や利用者に食事を提供するためには、大量の調理や盛り付けを行う必要があり、どうしても「出来立ての食事」をそのまま提供することが難しくなります。
さらに、近年は人手不足などの影響もあり、調理した料理を一度冷却・保存し、提供時に再加熱する「作り置き方式」を採用する施設も増えています。人手の多い時間帯にまとめて調理し、食事の時間に再加熱して提供する方法や、専用施設(セントラルキッチン)で大量調理した料理を各施設へ配送する方法などが用いられています。こうした方式では、どうしても出来立ての料理に比べて、美味しさを保つことが難しい場合があります。
では、「給食はまずい」というイメージのままでよいのでしょうか。もちろん、そうではありません。提供された食事をしっかり食べてもらえなければ、計画された栄養管理の基準を十分に満たすことはできません。だからこそ、管理栄養士をはじめとする関係者は、美味しい給食を提供するために日々努力を重ねています。
現場では、日常業務の中で美味しく調理できる条件を探る実践的な取り組みが行われています。また大学など研究機関では、給食管理を専門とする研究室が、調理科学の視点から美味しさを保つ方法を研究しています。 「大量に作る給食だから仕方ない」「人手不足だからまずくても仕方ない」と諦めるのではなく、美味しい食事を準備し、しっかり食べてもらうことで、体だけでなく心も満たす給食を目指しています。これからの給食がどのように変わっていくのか、少し楽しみにしていただければと思います

龍谷大学農学部・農学研究科 教授 朝見祐也
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