アイコン

COLUMN

お役立ちコラム

連載第17報:誰一人取り残さない地域医療が求められる

2025.12.15|医療計画へき地医療無医地区

 わが国では医療保険(被用者保険・国民健康保険)・後期高齢者医療制度によって,すべての国民が医療サービスを等しく受ける権利があります。

 その基盤整備のために,1985年(昭和60年)に医療計画が法制化されて「都道府県が県民に良質な医療を提供するための医師数確保・病床数確保などの計画を地域の実情に応じて主体的に作成する」こととなっています。

 この医療計画では「がん」,「脳卒中」,「心筋梗塞」,「糖尿病」,「精神疾患」の5疾患対策と「へき地医療」「救急医療」「災害時医療」「周産期医療」「小児医療」「振興感染症」の6事業の充実に関する計画が必須項目となっています。最近では「在宅医療」も加わっています。(註1)

今回のコラムでは,「へき地医療」についてご紹介いたします。

へき地医療

 へき地医療とは,『人口減少地域,高齢化地域,豪雪地域,離島などで医療の確保が困難な「無医地区」「準無医地区」で行われる医療』のことです。

 「無医地区」「準無医地区」では,地域住民の医療受診の機会均等を危うくしています。そのため,都道府県知事が「へき地医療拠点病院」を指定して,巡回診療,医師派遣,遠隔医療などの支援を行うことでへき地医療を支えています。(註2)

無医地区とは、「医療機関がなく,中心部から半径約4㎞圏内に50人以上が住み,容易に医療機関を利用できない地区のこと」

滋賀県の無医地区:
甲賀市(田代,畑)
・高島市(上針畑)
準無医地区とは、「無医地区の要件を満たしてはいないが,無医地区に近い医療確保が困難な状況にある地区のことで,都道府県知事が認定することとなっている」

滋賀県の準無医地区:
長浜市 (中河内,椿坂,柳ケ瀬,菅並,杉野,大見)
高島市 (下針畑,在原)
東近江市 (政所)
近江八幡市(沖島)

出典; 令和6年度「滋賀県医師確保計画」,滋賀県

医療過疎地域

 「無医地区」「準無医地区」の都道府県認定を受けていなくても,医師不足,医療施設の偏在,住民の高齢化などの理由によって,住民の通院が困難な「医療過疎地域(仮称)」があることが予想されます。「周産期医療」「小児医療」の空白地域もみられます。

 都市部であっても住民の減少地域がみられ,高齢住民の自動車免許の返納やバスの運行がなくなってしまった地域では,交通手段がないため「買い物難民」が社会問題となっています。当然のことながらこれら「買い物難民地域」では,言わば「通院難民(弱者)」も生じている「医療過疎地域」があります。

 この「医療過疎地域」では通院医療受診が困難であるがために,受診控えによって疾病の重症化が危惧されます。へき地医療地区の認定を受けていなくても巡回診療等の支援が必要な地域と考えられます。

 誰一人取り残さない地域医療の実現のために,県市町行政が見落としがちな「医療過疎地域」の実態把握とその対策が期待されます。

さいごに

 皆保険制度・後期高齢者医療制度のもとにすべての国民,県民,市民,町民が良質な医療サービスを等しく受ける権利があります。どこの地域に居住していても,誰一人取り残さない地域医療サービスの提供体制の充実が望まれます。

 一方,読者の皆様にはご自身の生活改善の努力とご家族の協力で,疾病の予防・重症化予防に努めて頂きたいと思います。

 具体的な疾病の予防・重症化予防などでご相談があれば,「医療と介護の相談窓口」においでください。また,お住いの地域が「医療過疎地域」だとお感じになっていましたら,お困りの状況をお話ください。各種専門の相談員がお待ちしています。

註1;  国民衛生の動向2025/2026,厚生労働統計協会
註2; 令和4年度「無医地区調査」,厚生労働省
注;イラストは,illust ACのフリーイラスト(麦 作)から引用

湖南メディカル・コンソーシアム 安西将也

一覧

PAGE
TOP