COLUMN
お役立ちコラム
2025.05.07|イシクラゲ食文化食物繊維
雨の日の運動場などでよく見かけるあのワカメのような物体(図1)、あれ何だと思いますか?この正体は、「イシクラゲ」と呼び、ンジュモ科,ネンジュモ属に属する陸棲シアノバクテリアの一種でなんです。
図1 イシクラゲの外観(左:湿潤状態,右:乾燥状態)
このイシクラゲ、食べることができるってご存知でしたか?このイシクラゲを昔、食料としていた地域があります。滋賀県では、米原市の姉川流域の伊吹地域などで食されていました。雪解け後の3 月下旬から 4 月上旬に採集し、乾燥貯蔵して食用にしたようです。この地域では昭和 30 年代ごろまでは食べられていて、味噌汁や酢のものなどに調理されていました。戦中や戦後直後の飢えをしのぐために食べられていたようですが、現在では経済的に豊かになり、イシクラゲにかわるワカメなども手に入るようになって、イシクラゲを食べる人が減ったようです。
私たちは、この消えつつあるイシクラゲの食文化を残していこうと、伊吹地域のイシクラゲ料理の再現をしてみました(図2〜5)。
図2 イシクラゲの酢の物
図3 イシクラゲの酢味噌和え
図4 イシクラゲのかき揚げ
図5 イシクラゲの味噌汁
イシクラゲは無味無臭ですので、食感を楽しむ食材です。ワカメと同様な使い方ができ、様々な料理にも合います。筆者らは、詳細なレシピを論文にまとめています(https://www.jstage.jst.go.jp/article/rsc/44/5/44_78/_pdf/-char/ja)。イシクラゲは、食物繊維が多く含有されており、健康増進の観点からも有用な食材であると考えます。
運動場、駐車場、その他道端にあるイシクラゲは、排気ガス、動物の糞尿などにより汚染されている可能性があります。ご自身の責任で採取・利用してください。
龍谷大学農学部では、この食文化の継承などを目的に、イシクラゲの「栽培化」に取り組んできています。現時点では,量産することができていませんが、量産が可能になれば、多くの生産者への協力得たいと考えています。今後は、限られた地域での活用ではなく、わが国、あるいは世界各地でイシクラゲが食品として活用されることを期待したいと思います。
参考文献:
朝見 祐也,日比 裕美子,久米 美春,坂梨 健太,玉井鉄宗.2024.滋賀県米原市姉川周辺地域におけるイシクラゲ(Nostoc commune Vauch.)の食文化的背景とその料理の再現.食生活研究 44, 78-82.
龍谷大学農学部・農学研究科 教授 朝見祐也
PAGE
TOP