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お役立ちコラム
2025.02.25|シックディマネジメント高齢者
高齢者の健康管理において、「シックデイマネジメント」は非常に重要な概念です。
シックデイとは、通常の健康状態とは異なり、発熱、嘔吐、下痢、食欲不振などの急性症状が現れる日を指します。特に、慢性疾患を抱える高齢者にとって、シックデイは病状の悪化や合併症を引き起こすリスクが高いため、適切な管理が求められます。
シックデイは、一時的な体調不良にとどまらず、高齢者の健康に大きな影響を及ぼす可能性があります。主な影響として以下の点が挙げられます。
(1) 脱水と電解質異常
発熱や下痢、嘔吐などの症状が続くと、体内の水分や電解質が急速に失われ、脱水症状を引き起こします。高齢者はもともと喉の渇きを感じにくいため、気づかないうちに重度の脱水状態になることがあります。
(2) 低血糖や高血糖
糖尿病を持つ高齢者は、シックデイ時の食事摂取量の減少や嘔吐により低血糖を起こしやすくなります。一方で、感染症やストレスによって高血糖になることもあります。適切な血糖管理が行われないと、糖尿病性ケトアシドーシスや高血糖高浸透圧症候群といった重篤な状態を引き起こす可能性があります。
(3) 服薬管理の困難さ
シックデイでは、通常の薬の服用が難しくなることがあります。例えば、食事が摂れない状況で糖尿病薬や降圧薬を通常どおり服用すると、低血糖や低血圧を引き起こすリスクがあります。一方で、患者やその家族、介護者の判断で、服薬を中断すると病状が悪化するため、適切な調整が必要となります。
シックデイに適切に対応するためには、事前の準備と迅速な対策が不可欠です。
以下のポイントを押さえておくことが重要です。
(1) こまめな水分補給
脱水を防ぐために、こまめに水分を摂取することが大切です。電解質を含む経口補水液やスポーツドリンクなどを活用し、適切な水分補給を行いましょう。
(2) 食事が取れない場合の対応
シックデイ時は食欲が低下することが多いため、無理に通常の食事を摂らず、消化に良い食べ物(おかゆ、スープ、ゼリーなど)を選ぶことが推奨されます。また、糖尿病患者の場合は、糖分を含む飲料(ジュースやゼリー飲料)を少量ずつ摂取することで、低血糖を予防することができます。
シックデイ対応時の食事については、事前に主治医や管理栄養士に相談しておきましょう
(3) 服薬の見直し
シックデイには、一部の薬の服用を中止または調整する必要があります。
例えば、
・糖尿病薬(特にSGLT2阻害薬やメトホルミン)は、脱水や腎機能悪化のリスクがあるため、医師の指示に従って調整します。
・降圧薬(ACE阻害薬、ARB、利尿薬など)は低血圧を引き起こす可能性があるため、慎重に管理します。
服用薬に関しては自己判断せず、事前に主治医と相談しておきましょう
(4) 体調のモニタリング
シックデイ時は、血圧、血糖値、体温、尿量、体重などをこまめにチェックし、異常があれば早めに医療機関に相談することが重要です。
特に、尿量の減少や意識の低下が見られる場合は、緊急受診が必要となります。
災害時は医療機関へのアクセスが制限され、通常の医療支援が受けられない可能性があります。そのため、シックデイに備えて以下の点を準備しておくことが重要です。
(1) 緊急用備蓄品の準備
・経口補水液や糖分補給が可能な食品(ジュース、ゼリー飲料、飴など)
・体温計、血圧計、血糖測定器などの健康管理用品
(2)お薬情報の管理
服用中のお薬情報を「お薬手帳」などで管理しておきましょう。
(3) 代替手段の確保
医療機関が利用できない場合に備え、近隣の避難所や医療支援体制を確認しておきましょう。
また、かかりつけ医や家族と緊急時の対応を事前に相談しておくことが望ましいです。
介護職員や家族は、高齢者のシックデイマネジメントを支援する重要な役割を担っています。以下のポイントに注意することで、適切な対応が可能となります。
・利用者の体調変化に注意を払い、早期に異常を察知する。
・服薬状況を確認し、必要に応じて医療従事者と連携して調整する。
・食事や水分補給のサポートを行い、脱水や栄養不足を防ぐ。
・血糖測定や血圧測定を行い、異常値が出た場合は医師に報告する。
シックデイは、高齢者にとって重大な健康リスクをもたらす可能性があるため、事前の準備と適切な対応が不可欠です。家族、介護職員、医療従事者が連携し、こまめな水分補給、適切な食事管理、服薬調整、体調モニタリングを行うことで、健康リスクを最小限に抑えることができます。特に、慢性疾患を持つ高齢者の場合は、災害時の備えも含めたシックデイマネジメントが病状の安定化に直結するため、日頃から準備しておくことが重要です。
社会医療法人誠光会 淡海医療センター
薬剤部
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