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介護職員のストレスについて

2025.02.07|ストレス介護職員介護老人福祉施設

 近年,仕事や職業生活に関して強い不安,悩み又はストレスを感じている労働者が5割以上を超えていると言われています。また,仕事による強いストレスが原因でメンタル不調を訴える労働者が増加傾向にあります。

 厚労省の「令和5年労働安全衛生調査」によると,メンタル不調により,連続1か月以上休業した労働者は一般事業所で13.5%,退職した労働者は6.4%です。一方,医療・福祉分野の事業所ではそれぞれ17.6%,12.0%となっていますから,メンタル不調による医療・福祉分野の離職率は一般事業所の2倍になっています。

 そのため,特に,医療・福祉分野の労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止して,休業や失職による家族の損失,社会の損失を防ぐことが重要な課題となっています。

 一方,高齢化の進展に伴い介護職員の需要が年々増加しているにもかかわらず,介護職員の不足が最も深刻なのは介護老人福祉施設です。7割以上の施設では介護業務負担が大きいため離職者が多く,介護職員の不足感を訴えています。したがって,介護職員のメンタルヘルスケアと介護負担の軽減化を図る業務改善の工夫が大きな課題となっています。

A.職業性ストレスについて

 2024年の厚生労働白書(厚労省)で心身の健康に関する調査で最大のリスクとして「ストレス」を挙げた割合が20年間で3倍に増えたことを報告しています。特に,若い世代の方が「こころの不調」を身近に感じる傾向があり、その対策の必要性を強調しています。

 また,厚労省の職業性ストレスチェック調査によると,一般事業所の労働者の10%程度が高ストレス者であると予想されています。

 そこで,著者らが複数の介護老人福祉施設の介護職員のストレスチェック調査を実施したところ,介護職員の10%から20%程度が高ストレス者となっていました。特に,経験年数では5年未満,年齢では40歳未満の介護職員に高ストレス者が多いことがわかりました。

B.ストレス因子について

調査の結果,介護老人福祉施設の介護職員のストレスと考えられる因子は,以下の①から⑤が大きいことがわかりました。

経験年数5年未満

①「自分の技術や知識を仕事に使うことが少ない」などの技能の活用度不満に起因するストレス

②「非常にたくさんの仕事をしなくてはならない,時間内に仕事が処理できない,一生懸命に働かなくてはならない」などの仕事の量的負担に起因するストレス

③「働きがい,生きがいがない」などの心理的負担感に起因するストレス

④「かなりの注意を必要とし,勤務中はいつも仕事のことばかり考えなければならない」など仕事の質的負担に起因するストレス

⑤「職場での対人関係」のストレス

C.ストレスコーピングについて

 前述のストレス要因を考慮すると,介護職員自らの仕事への積極的な参画や介護技術や知識の獲得が求められます。さらに自らが積極的に職場の人間関係を形成するなどして,心理的・身体的な仕事の質・量の負担軽減を図る工夫と自助努力が必要であることを示しています。働きがい・生きがいは与えられるものではないことの気づきも重要です。

 また,特に経験年数5年未満,40歳未満の者や無資格者の不安解消のために先輩からのアドバイスや上司からの適切な介護技術指導や研修会の実施が重要です。介護施設管理者は,新規介護職員の数的確保を図る一方,現有介護職員のリカレント教育(学び直し)の機会を提供することも重要です。

 湖南メディカル・コンソーシアムでは,龍谷大学農学部・農学研究科,社会学部・社会学研究科と包括協定を締結していますから,会員法人の看護師,管理栄養士,社会福祉士,精神保健福祉士,介護福祉士,事務職員等の大学院でのリカレント教育の道が開かれています。

湖南メディカル・コンソーシアム
健康福祉ふれあいセンター
センター長 安西将也

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