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COLUMN

お役立ちコラム

生き方は自身で自由に選択できる

2024.10.16|

社会医療法人誠光会 淡海ふれあい病院
病院長 平野正満

病院とは元気になって退院するところである。しかし、残念ながら亡くなることを前提に患者さんを受け入れる病院がある。いわゆる慢性期病院と称される病院である。私たちの病院は退院されることを前提とした回復期病院であるが、一部の病棟は慢性期治療を提供する医療療養病棟を併設している。この病棟には医療が必要で自宅では生活が困難な患者さんが入院されている。幸い病気が良くなり退院される患者さんもおられるが、多くの患者さんは病気の進行とともに病院で最期を迎える。

以前、別れのホスピタルというタイトルの番組が放映された。現場は慢性期病院である。主人公は看護師であった。亡くなる場面が数多く登場したが、主人公は感情を表に出すことなく患者さんに優しく寄り添いながらそれぞれの死を迎い入れていた。甲斐がいしく介護する姿には、患者さんに最後まで尊厳を持って生き抜いてほしいとの思いが溢れていた。自分の介護に自問自答しながら悩みぬく主人公の姿が印象的であった。

死を迎える現場は非日常の世界である。死は誰にも訪れる。生きている限り避けて通れない現実である。その場に立ち会う私たち医療者の立ち位置や役割は重要である。人生の終わりに最大限の思いやりと敬意を込めて接し、行動することを忘れてはならないことは当然であろう。一方、患者さんは自分の死に方を選択することはできない。その分、私たちは患者さん自身が望む死の迎え方は何なのかを問いかけながら尊厳ある死を追求し提供しなければならないと思う。超高齢社会が進展する現代には別れのホスピタルの存在は重要である。しかし、この番組は死を通じて生きることの大切さも説いている。死の迎え方は選択できなくても、生き方は私たち自身が自由に選択できるからである。

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