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COLUMN

お役立ちコラム

高齢者の摂食・嚥下障害と食事の工夫2

2023.02.03|その他

摂食・嚥下の取り組み

淡海ふれあい病院では、摂食・嚥下障害をお持ちの患者様・ご家族様を対象とした食事指導を行っています。患者様に適した食事姿勢、食事形態・量、食べ方を指導書にまとめ、お渡しさせていただいています。今回は、その中から、食事姿勢、食べ方のポイントをご紹介させていただきます。

1.安全に食べる姿勢は?

食事姿勢

座れる方の座位姿勢

座れる方の座位姿勢は、自力摂取がしやすい反面、体幹が不安定になりやすいので注意が必要です。安定した座位姿勢がとれるような工夫としては、車椅子や椅子の種類の選択、テーブルの高さ調整、足台やクッションの準備が必要となります。椅子の高さは、足底がしっかりと床に着く状態にします。足底が床に着かない場合は、足台などを置くと良いです。車椅子などの背もたれがある状態では、背もたれが広すぎると横に傾きやすくなるので、姿勢を安定させる目的でクッションなどを背部と椅子の間などに入れると良いです。テーブルの高さは、肩を自然に下ろした状態で肘が台の上に付く程度に調整します。姿勢調整のために、工夫をしても安定しない、もしくは時間経過とともに姿勢が崩れてくる場合は、無理に座位姿勢で摂取していただくのではなく、リクライニングができる車椅子に変更したり、ベッド上で食べていただいたりする必要があります。

リクライニング位

リクライニング位は、主に食べ物の送り込みに障害がある方、嚥下前に誤嚥する方、喉に残った食べ物を誤嚥する方が対象となります。長時間のリクライニング位は、ずり下がりやすくなるため、腰の位置をベッドの折れ目と合わせるように安定させ膝の下にクッションを置くなどして、軽く膝が立つような姿勢を取ると良いです。また、顎を軽く引いた程度の角度になるように枕を当てると良いです。顎と胸骨の間が拳1個程度になるのが理想です。

食事形態・量

嚥下食ピラミッドを基本に、摂食・嚥下能力に応じて選択していきます。食形態のアップを検討する時は、摂食状況だけでなく、発熱の有無、呼吸状態の変化、喀痰量の変化、咳嗽の有無を考慮し決定していきます。

嚥下食の作成には手間がかかる事も多いので、市販の介護食や、介護食対応の配色弁当も上手に活用されることをお勧めします。また、食欲がなく摂取量が少ない場合は、高カロリー食品の使用も有効です。

2.介助の工夫は?

食べ方

➀自助具の活用

筋力低下などがある患者さんには、食べやすく工夫された箸・スプーン・フォークなどの自助具を活用します。

②介助の位置

患者さんと目の高さの位置が理想です。介助者が立った状態で食事介助を行うと患者さんは頸部伸展位となりやすいので注意が必要です。

③最初はむせにくい食品から

誤嚥は食べ始めと食事の後半に起こりやすいため、最初と後半は、むせにくい食品(例えばトロミ茶等)を多く取り入れると良いです。一度の嚥下で飲み込みきれなかった食べ物を複数回嚥下してもらう事や、お粥など比較的咽頭残留しやすい食物の後に咽頭残留しにくいトロミ茶等を交互に嚥下してもらう事も有効です。食事の最後もトロミ茶を嚥下してもらうと口腔内や咽頭の残留物がクリアされて誤嚥防止につながります。

④一口量は少なめにする

咽頭残留が多くなると誤嚥の機会も増えてしまいます。小さめのスプーンを使うようにします。

⑤スプーンの口腔への入れ方

スプーンは正面からまっすぐ入れて、舌の中央に乗せ、しっかり口を閉じてもらってから、斜め上方にゆっくり引き抜きます。こうすることで、舌の中央に食べ物を配置することができます。

⑥嚥下を確認してから次のひと口を入れる

患者さんの喉仏の辺りをよく観察し、喉頭挙上が起こっていることを確認します。また、時々、開口してもらい、口の中に残留がないか確認します。ムセなどの症状が無い不顕性誤嚥の患者さんでは、誤嚥時に無反応のことがあるので必要に応じて「あー」と発声してもらい、咽頭残留を確認します。

⑦話しかけるのは食事を終えてから

摂食嚥下障害をもつ患者さんが話しながら食べてしまうと、口腔や咽頭に食物がある状態で呼吸する事になり誤嚥を招きます。特に認知障害の患者さんでは、食事中に話かけるのは極力避けましょう。

3.誤嚥を防ぐ食品のポイントは?

高齢になるとどうしても、唾液の分泌量が減り、噛む力や飲み込む力も弱くなるため、誤嚥しやすくなります。食べにくい食品を工夫して食べやすくしましょう。

ムセたり、のどにつまりやすい食べ物

  •  パサパサ系:パン、カステラ、イモ類など
  •  ポロポロ系:ご飯粒、そぼろ、かまぼこなど
  •  サラサラ系:水、お茶、ジュースなど
  •  ペラペラ系:のり、わかめ、青菜類など

飲み込みやすくするポイント

  • 適度な水分を含ませてパサつきを防ぐ。(パサパサ系に対応)
  • とろみをつけたり油脂やつなぎでまとめてバラけるのを防ぐ。(ポロポロ系に対応)
  • あんでまとめる。(ポロポロ系に対応)
  • 液体にはとろみをつけてムセを防ぐ。(サラサラ系に対応)
  • 細かく刻んであんでまとめる。(ペラペラ系に対応)

などが有効です。

食事の見た目も重要です。美味しそうに見えるように盛り付けしましょう。

4.とろみはどう使うといいの?

液体はのどを流れるスピードが速く、誤って気管に入りやすいので、飲み込む機能が低下した方は、とろみをつけて流れを緩やかにするとムセや誤嚥を防ぎやすくなります。

適切なとろみをつけるポイント

とろみの強さ:薄い・中間・濃いのおよそ3段階くらいが目安です。

とろみの強さは、飲み込む能力によって、適したものに調整することが大切です。
とろみが強すぎると口やのどに貼り付いて窒息につながる恐れもあるので、不安がある方はご相談ください。

トロミ茶は誤嚥しにくい食品としていますが、作り方に注意しないと、ダマになったり、必要以上に粘性が増し、かえって誤嚥しやすいものが出来上がってしまいます。実際に、退院後、上手くトロミが作成できないとのお声をいただくことがありました。今回、トロミ作成のコツを示した動画を作成しました。何度も簡単にご覧いただけるように淡海ふれあい病院のホームページからアクセス可能です。

動画アクセス方法

淡海ふれあい病院のホームページを開いていただき、【患者さん・ご家族の方へ】から【詳細はこちらへ】をクリックし、各動画をご覧ください。

最後に、摂食・嚥下の説明には聞きなれない用語も多く、理解が難しい事もありますが、できる限り分かり易く、かつ実践しやすい方法をお届けしたいと日々精進しております。疑問、ご不安等ございましたら、お気軽に誠光会の言語聴覚士までお声かけください。

淡海ふれあい病院

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